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インストラクショナル・デザインとは? 研修設計の理論体系を学んでみよう

こんなときどうする?

「新卒向けの研修、設計してくれ」
「eラーニング(マイクロラーニング)のコンテンツ、任せたぞ」

上司にこんなことを頼まれたとしたら、あなたはどのように対処しますか?

今までの経験を使って、なんとなくそれっぽいものを作ることはできるかもしれません。
しかし、なぜそのように設計したのかを聞かれると困ってしまうのではないでしょうか。

こういう時役に立つのが、先人たちが積み上げてきた知、理論体系です。
今回役立つのは、「インストラクショナル・デザイン(ID)」と呼ばれる理論体系になります。

インストラクショナル・デザインを学んで、一流の研修担当者を目指しましょう。

インストラクショナルデザインとは

インストラクショナル・デザイン(ID)とは、それぞれの教育シーンにおいて、学習者に最適な学習効果をもたらすための方法論のことです。
第二次世界大戦時のアメリカ軍の訓練モデルに端を発し、企業教育にも導入されていきました。
欧米では「インストラクショナル・デザイナー」という専門職としても認知されており、大学院のような養成機関も存在しています。IDの分野では、日本は少し遅れていると言えるでしょう。

インストラクショナル・デザインの目的は、研修の効果を最大化、つまり学習者の習熟度を上げ、研修全体の効率を高めることになります。

eラーニングが登場したことで、この研修設計の重要性が再認識された結果、インストラクショナル・デザインが注目され始めたのです。

 

インストラクショナルデザインの全体像

インストラクショナル・デザインが研修の設計を助けてくれるものだということはわかったと思います。
では具体的に何を学べばいいのか、という話になりますが、まずは全体像を見ておきましょう。

インストラクショナル・デザインには、多くの理論が含まれます。

研修設計を「どのような順番で行うか」「何を検討しなければならないか」など、さまざま種類の理論がありますが、内容や使うタイミングが被っているものも多いので、自分のケースに合っていると思うものを使うようにしましょう。

基本的には「プロセスに関する理論」を1つ選択し、それから「要件・観点に関する理論」を駆使していければいいと思います。

インストラクショナルデザインの主な理論

今回はインストラクショナル・デザインの中でも主要な理論を4つ学んでおきましょう。
なお、ここでは学術的な言及をしたいわけではないので、研究者の名前等は省かせていただきます。

ADDIEモデル

最初に紹介するADDIEモデルはインストラクショナル・デザインの世界の中でも極めて有名で基本的なものです。
研修開発のプロセスを5つに分けた理論となります。

① 分析(Analysis)

第一のフェーズ「分析」では、その研修の目的は何なのか、対象は誰なのか、どのような内容が必要なのか、を明確にしていきます。
ADDIEモデルにおいて最も重要なフェーズです。ここで要件が明確になっていない、間違っている、などということになれば期待する成果が得られる可能性は一気に低くなるでしょう。

「○○について□□できるようになる」などのように、まずは言語化、それから詳細を考えていきましょう。

② 設計(Design)

第二のフェーズ「設計」では、分析で設定した要件をどのように実現していくのかを考えます。評価基準等もここで決めておくのがいいでしょう。

このタイミングで、他のID理論(具体的な教授方略に関するもの)を使ったり、参考になりそうなケースを探したりすることになります。
研修担当者の腕の見せ所と言えるでしょう。

③ 開発(Develop)

第三のフェーズ「開発」では、設計した内容を実際に作っていきます。ここからは外部の力を借りる事も増えてくるので、プロジェクトマネジメントの力が求められるでしょう。

また、コンテンツだけでなく、環境、サポート体制や人員配置などの準備も進めていきます。

④ 実施(Implementation)

第4のフェーズでは研修を「実施」します。実施の段階で必要なのは、設計フェーズで定められた計画を確実に遂行すること、そして不測の事態にしっかりと対応することです。

また、実施の様子についてはあとで参考にできるよう記録しておきましょう。

⑤ 評価(Evaluation)

最後のフェーズ「評価」では、学習者が目標を達成しているか、研修全体が目標を達成しているかを評価します。
評価の結果は次の①分析フェーズにフィードバックし、より質の高い研修の開発につなげましょう。

 

五つ星インストラクションの要件(IDの第一原理)

ID第一原理とも呼ばれる「五つ星インストラクションの要件」は、効果の高い学習環境を生み出すための5つの要件がまとめられたものです。
設計の指針として使うことができるでしょう。

① 問題(現実に起こりそうな問題に挑戦する)

実際に起こりそうな問題解決に取り組ませることで、学習者の興味を喚起し有用性を認識させることができます。

② 活性化(すでに知っている知識を動員する)

過去の経験や知識と新しい知識を関連付けさえることで、構造的理解や応用性の習得、また新知識の学習意義の把握を促します。

③ 例示(例示がある→”show me”)

実際にやって見せたり、現実のケースを紹介したいするなどして、教える知識をリアルに感じさせることで、学習効果を向上させます。

④ 応用(応用するチャンスがある)

学んだことを応用するために、類似の練習課題などを用意し、質問やフィードバックも交えながら、学習の定着・応用を図ります。

⑤ 統合(現場で活用し、振り返るチャンスがある)

実際の仕事や日常生活の中で学習内容を活用できるよう支援することで、学習のメリットを実感させます。

 

ARCSモデル

ARCSモデルは、学習意欲を促進する要素を4つに整理した理論で、学習者のモチベーションが上がるような研修の設計に役立ちます。

Attention:注意

「面白そう」「何かありそう」など、学習者の興味・関心を集めるような仕掛けを考えましょう。

興味を引くために新規性を使ったり、探求心を刺激するために謎を用意してみたり、注意を維持するために研修に変化をつけたり(場所や雰囲気を変える)などの案が挙げられます。

Relevance:関連性

「なぜ学習するのか」「自分と何の関係があるのか」を知らせることで、学習にやりがいをもたらすことができます。
学習者の経験と教材を結びつけたり、目的や動機と繋げたりすることで関連性を利用してみましょう。

Confidence:自信

「自分はできる」「努力に意味がある」と思わせることで、学習に積極的になってもらえるかもしれません。
成功体験をどのように与えるか、学習者自身が考え努力するような課題はどのようなものか、を考えましょう。

Satisfaction:満足感

1つの学習が終わったタイミングで「やってよかった」と思ってもらうことで、次の学習につなげます。
学習内容が役に立つ経験や学習体験自体の面白さなどをデザインし、また外発的な報酬、学習者同士の公平性などに気を配りましょう。

 

9教授事象

9教授事象は、効果的な研修のプロセスを9つに分けてまとめた理論です。
わかりやすいように、3つずつ導入・実践・評価(定着)にグループ分けされることも多くなっています。それぞれの内容は難しくないので、ここではリストアップにとどめておきます。

<導入>

1.学習者の注意を喚起する
2.学習者に目標を知らせる
3.前提条件を思い出させる

<実践>

4.新しい事項を提示する
5.学習の指針を与える
6.練習の機会をつくる

<評価・定着>

7.フィードバックを与える
8.学習成果を評価する
9.保持と転移を高める

以上、4つの理論を学びました。インストラクショナル・デザインにはこれ以外にも多くの理論が存在しますので、自分のケースに合った理論を探してレベルアップしていってください。

 

インストラクショナルデザインを学ぶ意味とは

インストラクショナル・デザインの勢いに火が付いた契機はeラーニングの出現でした。
しかしインストラクショナル・デザインはeラーニング以外の研修設計にも役立つ普遍的な理論だと思います。
今後、研修のメディアが未だない新たなものに代わっても、インストラクショナル・デザインを修めておけば怖くなどないのです。