ブレンディッドラーニングとは? 「個別学習」と「集合学習」のいいとこ取り学習スタイルを解説
ブレンディッドラーニングとは?
ブレンディッドラーニング、と呼ばれる学習スタイルを知っていますか?
「eラーニング」と「集合研修」をブレンドした学習・研修スタイル。
それがブレンディッドラーニングです。(企業の研修という文脈の意味)
「教育界の破壊的イノベーション」とも言われるブレンディッドラーニングは、実はeラーニングの普及と共にアメリカでは広がり始めたていたようですが、ここ最近で急速に広まってきました。アメリカの多くの学校などにおいて取り入れられています。
今回はそんなブレンディッドラーニングの意味や効果、その方法を中心にお伝えします。
eラーニングのデメリットの復習
ブレンディッドラーニングはeラーニングにどうしても生じてしまうデメリットに対応するために生まれた学習・研修スタイルです。
まずはeラーニングのデメリットを復習しておきましょう。
主要なものを挙げると4つになります。
① モチベーションの持続が難しい
1人でやる学習というのはモチベーションの持続が難しいものです。講師がいるわけでもないのでプレッシャーもありません。eラーニングがいくら便利でも、意欲をもって取り組まれなければ何の意味もないのです。
② 学習者同士の交流が減る
eラーニングは個人で学習できるのが強み、逆に言えば、協同での学習を想定していません。結果、学習者同士の交流が減り、学習効果の減衰やモチベーション低下、気付きが共有できない、などの悪影響が出るかもしれません。
③ その場で質疑応答ができない
eラーニングに講師はいません。気になったことやわかりにくかったことがあってもすぐに質問できないのです。こういったインタラクティブ性の欠如は学習者にとって大きなデメリットです。
④ すべての内容やプロセスをeラーニング化できるわけではない
実技やインタラクションが必要な内容はeラーニング化しにくいものです。eラーニングのみではこれらの内容に抜け漏れが出てきてしまいます。
ブレンディッドラーニングでeラーニングと集合研修の良いとこ取りを
ブレンディッドラーニングはこれらeラーニングの抱えるデメリットに対応します。
どのように対応するのでしょうか。
「集合研修」と組み合わせて運用するわけですね。
eラーニングが苦手な所は集合研修でやってしまおう、というコンセプトです。
さらに言えば、eラーニングと集合研修を組み合わせることで「足し算」以上、「掛け算」の効果を発揮しようとするものになります。
より詳しく見ていきましょう。
組み合わせ方にはいろいろなものがありますが、最もポピュラーなものだと、
①eラーニングで知識を学習→②集合研修で実践・インタラクティブな学習→③eラーニングで事後課題
のような形式が挙げられます。
家で予習→授業→家で復習の黄金サイクルと似ていますね。
違いとしては、学校における授業がもっぱら知識付与を目的としているのに対し、ブレンディッドラーニングにおける②の活動は、より実践的なもの(アクティブラーニング)を想定している点です。知識付与に関しては①のeラーニングで終えてしまうわけですね(→反転学習)。
<eラーニングのデメリットに対するブレンディッドラーニングの効用>
→① モチベーションの持続が難しい
ブレンディッドラーニングにおける集合研修はeラーニングを想定しています。したがって、集合研修までにeラーニングに取り組んでいなければ、集合研修に全くついていけない、ということが起こるわけです。
管理者側としては、そのような怠慢者が集合研修に交じってしまうと、研修の効果が落ちてしまうので、注意が必要です。予習を忘れてもちょっと怒られるだけで済む学校とは違うのです。
→② 学習者同士の交流が減る
集合研修の場で交流が促進されることになります。モチベーションの向上や学習効果に関する問題がいくらか解決するでしょう、
→③ 質疑応答がしにくい
集合研修の場に講師がいるので、あらかじめ疑問に思っていた事をその場で聞くことができます。インタラクティブな研修の中で生まれる疑問もあるでしょう。
→④ すべての内容やプロセスをeラーニング化できるわけではない
eラーニング化できない内容(アクティブラーニングが有効なものなど)は、集合研修の場でカバーすることができます。eラーニングにはeラーニングの得意な領域を任せればいいのです。
ブレンディッドラーニングで研修全体の価値を底上げ
また、ブレンディッドラーニングはeラーニングのデメリットを打ち消しているだけでなく、研修全体の価値の向上にもつながっています。
eラーニングによって得られたデータを用いて集合研修を進めることができる
eラーニングのメリットの1つは、データの収集です。
事前にeラーニングに取り組んでもらうことで、より研修対象者にフィットした内容を設計したり、学習効果の高いグループを組んだりといったことが可能になります。
個人に合わせた学習と協同的な学習のどちらも追求できる
日本従来の学校教育や通常の集合研修のデメリットは、個人にカスタマイズされた学習ができないことです。eラーニングはその問題に対する1つの答えでした。
一方で、協同学習が学習にもたらす効果は、様々な研究によって明らかにされています。eラーニングのみではこの恩恵は受けられません。
ブレンディッドラーニングは、個人にカスタマイズすることの恩恵も協同学習による恩恵も同時に得ることができます。
「適切な所で、適切な方法の学習スタイルを提供する」
それがブレンディッドラーニングなのです。
ブレンディッドラーニング導入のためのポイント
ここまででブレンディッドラーニングの効用については理解できたと思います。
最後に、ブレンディッドラーニングをいざ導入しようとするときに考えるべきポイントについて触れておきましょう。
ポイント① 設計フェーズの力を入れる
eラーニングと集合研修をどっちもやればブレンディッドラーニングになる、などということはありません。
適切なタイミングで適切な学習スタイルを提供するのがブレンディッドラーニングです。
そのため、ブレンディッドラーニング導入時には、研修設計が最も重要です。
研修内容を分析し、eラーニングにすべきか、集合研修にすべきか、どのタイミングで提供すべきか、きっちりと計画する必要があります。
ポイント② 期限の管理を確実に行う
ブレンディッドラーニングはeラーニングと集合研修、相互に貢献しあうのが理想です。
前述した通り、事前課題をやってこない人がいると研修の価値が落ちてしまいます。
ブレンディッドラーニング成功のためには、課題が適切に行われているかをモニタリングする体制を整えておきましょう。
ポイント③ 受講者がブレンディッドラーニングのプロセスや意味を理解する
提供者だけでなく、受講者がブレンディッドラーニングのプロセスや意味について理解しておくことも大事です。
研修担当者だけでなく、全ての社員がなぜブレンディッドラーニングを導入するのか理解しておけば、より質の高いコミットや研修の改善が行えるでしょう。
何のためにブレンディッドラーニングを行うのか
言葉が流行っているからと言って何でもかんでも取り入れているようでは、一人前の研修担当者とは言えないでしょう。
なぜブレンディッドラーニングを行うのか。
なぜこれはeラーニングでやって、あれは集合研修で行うべきなのか。
理論と経験に基づき、判断できる研修担当者を目指しましょう。